子宮VRで胎児体験!?東大制作展(III Exibition)での「ありえない展示」のリアルに迫る

東京大学の学生が展示会のコンセプト決めから運営を行い、日々の研究を芸術作品として発表する、テクノロジー x アートなイベント『東京大学制作展』第19回  “WYSIWYG? (WHAT YOU SEE IS WHAT YOU GET)”が、2017年11月16日(木) – 11月20日(月) に東京大学で開催されました。

東京大学赤門正面

東京大学赤門正面

これまで、筑波大学助教・メディアアーティストの落合陽一氏や、電子楽器の制作・演奏を手がけるサウンドデザイナーの中西宣人氏も参加してきた展示会です。

開発者インタビュー

藤井綺香

VR映像開発者

藤井綺香

東京大学大学院 学際情報学府 学際情報学専攻 先端表現情報学コース
稲葉・岡田研究室 修士1年

長野県出身。 物心がついたころからドラえもんが大好きだった。

2015年東京大学医学部卒業 静岡県にある焼津市立総合病院にて2年間初期臨床研修医として勤務

2017年4月東京大学大学院学際情報学府入学 情報システム工学研究室(稲葉・岡田研究室)所属

 

木村正子

IntoTheWomb発案者/外装造形

木村正子

東京工業大学 工学院 機械システム系 感性工学研究室 研究生

青森県出身。幼い頃より青森ねぶた祭りの造形に憧れ独学で造形を学ぶ。絵画展にて青森県の大賞受賞の経験がある。

日本大学工学部卒業 筑波大学 芸術専門学群 科目等履修生 修了

卒業後、シンガポールでのインターン含めた4社経験後、山形大学大学院 工学研究科の研究員となる。その後、TechShopを経て、フリーとなり技術記者を務める。

 

秋山秀郎

音響

秋山秀郎

武蔵野美術大学 通信課程 デザイン情報学科
デザインシステムコース 学部4年

数学専攻し、大学院を出たあとは、会社員としてIT関係の仕事をする。

しばらくは会社と家の往復だったが、2年くらい前からプライベートでイベントを企画したり、DJとして参加したりと、能動的な活動を始めた。

また、元々美術方面に興味があったことから、会社勤めしながら美大で学んでいる。

門脇明日香

インタビュアー/WEB企画・制作

あすきー(門脇明日香)

東京大学大学院 情報学環学際情報学府 先端表現情報学卒業

在学時、同制作展に4回出展。

卒業後、世界中で使われるものを作りたいと考え、大企業からベンチャーまで様々なプロダクト開発にエンジニア・プロダクトマネージャーとして従事。

2017年8月17日 KINDLER株式会社を設立。現在に至る。

 

インタビュー

 

門脇明日香

2017年11月に東大の制作展を訪れた時、工学部2号館9階の奥の方で、大きな子宮の中でVRを体験する人達の様子を目の当たりにして、とても驚きました。「一体どんなメンバーがこの作品を作り上げたのだろう!?」と思いました。長い行列ができていて、大盛況でしたね!

まずはこの『Into The Womb』(*1)という作品を作るに至ったきっかけと経緯を教えていただけますか?

*1 作品名『INTO THE WOMB』
全長3mほどの大きな子宮を思わせる造形の中に、産道と呼ばれる筒を通って入り、VRセットを装着した後、2分間胎児の視聴覚を体験する。
展示期間中は、工学部2号館9階に展示されていた。

木村正子

作品の原案者である私、木村が元々医療工学×脳科学をやっており、パニックに陥る人たちのために症状を緩和するデバイスの一つとして『Into the Womb』を考案しておりました。

最初は海外の大学院を受験するためのMotivation seat内にて一つの医療系プロダクトとして提案を盛り込みました。 しかし、そのseatを添削してくれた先生方には「なんてジェンダーなんだ。Wombという単語は慎みなさい」と言われる始末でした。

門脇明日香

もとは医療工学×脳科学の研究のテーマから始まっていたんですね。

『Womb』という言葉はジェンダーすぎると判断された。

木村正子

はい。しかし、なんとなく諦めきれない自分がおりました。 東京大学大学院情報学環にて制作展という講義があるのですが、2011年出会った制作展が非常に面白くいつか参加したいと熱望しておりました。

私自身情報学環を受験しておりましたが失敗し制作展に対し諦めがありました。 そんな時に、制作展はメンバーに情報学環の人が居れば他大学や社会人でも参加可能であるのを知りましたが、組める人が中々見つからず作品を出したくても出せない自分がそこにはおりました。

そのタイミングで友人の藤井さんが研修医を終えてから情報学環に入学しました。

藤井綺香

はい、学際情報学府に入ったことをきっかけに木村さんに制作展に出さないかと誘われました。 自分1人では出さなかったと思うので、声をかけてもらってすごく嬉しかったです。

木村正子

彼女とは入学当初4月から「制作展に出しましょう」と話し合っており、初めは巨大な心臓を造形し、Bluetoothにてセンシングした心拍に合わせて心臓の拡張と収縮を感じる作品でした。それはなるべく先生方の目線を気にかけていて控えめに「なるべく無難に展示しよう」と考えがあったからです。

そんな矢先、後期の制作展最初の講義の前日に木村の人生にて恋人との婚約破棄がありました。 私は心にポッカリと穴が空き不安定になり泣いてばかりの日々を過ごしておりましたが、私はこのまま後悔する様な人生を歩みたくない、人の目を気にして行動を制限したくないと強く思いました。 自分の中にある不安や恐怖というストッパーが一気に外れた瞬間でした。

早速、コンセプトやプレゼン資料を短期間で作り変え男性の講義担当者に巨大な子宮を作ると相談を持ちかけたところ、案の定「男性からみて子宮という言葉はジェンダーだ。恥じらいさえ感じる」と言われました。

先生の言うことを聞いて黙って従う訳には行きません。自分たちの作品を出すために努力しました。 そのために巨大でも内覧会まで間に合わせる確約を取りました。

秋山秀郎

僕は、BurningMan(*2)で知り合ったアニー(木村正子さん)が、僕が趣味でDJをやってることを覚えてくれていて、今回音担当として声をかけて頂きました。

僕が参画するときには、Into the womb のコンセプトは既にできていました。話を聞いて、面白そうなのでぜひ、と引き受けました。

BURNING MAN

*2バーニング・マン(BURNING MAN)

アメリカ合衆国で開催される大規模なイベント。アメリカ北西部の人里離れた荒野で年に一度、約一週間に渡って開催される。各参加者は、「プラーヤ」(Playa)と呼ばれる何もない塩類平原(en)に街を作り上げ、新たに出会った隣人たちと共同生活を営み、そこで自分を表現しながら生き抜く。そして一週間後、すべてを無に還す。

 

門脇明日香

藤井さんは学部ではお医者さんの道を歩まれていて、木村さんも医療系研究室と、お2人には共通のテーマがあり、藤井さんの学際情報学府入学や木村さんのプライベートのタイミングや秋山さんの参加が合わさって『Into the Womb』の実現に至ったんですね。

さまざまな障壁を乗り越え、短期間で企画から作品展示を実現するとは、やりきる力がすごいと思います。強い情熱がないとできないことですよね。

では、『Into the Womb』の目的・伝えたいこととは何でしょうか?また、念願の展示が叶って、反響はいかがでしたか?

木村正子

作品の最終目標はリラックス効果を与えられる医療器具です。主に発達障害や自閉症の方々のパニック状態を緩和できたらと構想しております。 今迄パニックの状態が起こっても健常者は言葉や体罰で戒める傾向がありました。そうではなく、母親の愛情と同じ様に包み込む暖かさを与える事でパニック状態を沈下させリラックスする事で自然とパニックになる現象を抑える事ができるはずです。

何故胎児状態が重要かというと胎児は母親の胎内で守られ、且つ人の意志がまだ生まれてない状態で一番α波が出ていると推測されます。

脳からα波が出ている時が一番リラックスしている状態です。例えば物事に集中していたり、何も刺激の無い状態など外部刺激に惑わされない状態こそα波状態を作ります。

また、この作品は「生まれ変わる事」を想像し作っておりますので、胎児体験を通じて母親に守られている安心感や無形の愛情を感じて頂ければと思います。

藤井綺香

胎児って何も考えないでいいというか何かを考えることを知らない状態で、常に何かを考えたり悩んだりし続けなければいけない大人からしたらうらやましいと思う部分があると思います。

戻りたいと思っても実際には絶対に戻れないけれど、『Into the Womb』を通じて少しでも似たような体験をすることができればと思います。VRを利用することで没入感を増すことができたらと考えていました。

実際に体験した方からは、面白かった、異世界感があった、不思議な体験だったなどと言って頂けてすごく嬉しかったです。

産道体験に関しても最初は恥じらう人も多かったですが、終わってからVR体験前に産道を通って良かったと言う人がいたことが印象的でした。 また、制作展が終わった後に研究室の人からはヤバいもの作ったねと言われました(笑)

門脇明日香

『Into the Womb』の目的は、主に発達障害や自閉症の方々のパニック状態を緩和するようなリラックス状態を作ることなんですね。

VR体験するのにまず、産道通るとか、普通ならびっくりしちゃいますよね。私も『Into the Womb』で体験しましたが、結構狭くて通るのが大変でした 笑 しかし、世界観に入り込むまでの前儀式のようで、とても良かったと思います。

作品を作ったり研究する上で大事にしていることはありますか?

木村正子

自分の心のままに表現する事を軸にする事です。例えば他人や先生方に良く思われようと思って制作したモノは自分ではなく他人の意見に従った事になります。

良いアドバイスはプラスに働きますが、作品の本心を壊してしまう様なアドバイスなら無視してもその方に嫌われ様とも構いません。

藤井綺香

自分が体験者の立場になったときにどう感じるかということを意識するようにしています。 また、共同制作者の人とのチームワークも大事だと思います。

秋山秀郎

僕は他の人とコラボするとき、なるべく相手の価値観を尊重するようにしています。受け身の人ではなく、すでに何かをやっていたり、これからやろうとしている人は、彼ら独自の専門性や価値観を持っています。僕が加わることによって相乗効果がでれば更に嬉しいです。

門脇明日香

3人の物事に取り組む姿勢のバランスが絶妙ですね!

このように情熱的に作品を作ったり研究する理由はなんですか?

藤井綺香

自分が欲しいもの・やりたい体験を自分で生み出したいという気持ちがあります。

木村正子

作品を創造し作り上げる事が私が生きている証だからです。私は不器用でマルチな人間ではありません。造形や芸術以外のコミュニケーションにおいて特に不慣れさを感じやっと意思を共有している様なモノです。

私にとって言葉の代わりが作品であり、作品を通じて他人と話す事でコミュニケーションのサポートになります。 コミュニケーションは人間の生活において非常に重要なモノです。しかし、大多数の中の少数かもしれませんがコミュニケーションが上手く取れない人たちもおります。

その補佐となるのが作品だったり、アートや音楽の芸術がその助けをしてくれます。なぜなら、芸術は作者の心を素直に表現してくれているからです。芸術は言葉のいらないコミュニケーション手段でるあると確信しております。

秋山秀郎

いろいろひっくるめて楽しいからかもしれません。あまり明確に意識していません。

門脇明日香

 

作ることで会話し、コミュニケートしてゆく木村さんのスタイルはまさにアーティストですね。また、欲しいことや楽しさといった内なる声を原動力としているのですね。

では、最後に将来成し遂げたい夢を教えてください

木村正子

次の世代に続く作品を作り上げて、その作品が永遠に続いて行く様にしてゆきたいです。作品を見た目の前の人が笑ってくれて、誰かの心に残る作品を生み出せたのなら本当に幸せです。

私の作品作りは一生続くモノだと思います。作品は私の体外で作った子供みたいなモノなので、最初は凄く愛おしいですが、いつか離れて作品が独り立ちし次の世代や別な人たちのアレンジがされて行きます。そうやって作品は継続してゆくと思います。

秋山秀郎

具体的ではないですが、強いていえば世の中の流れや自分の境遇の変化の中で、逆らわずに変化し続けることでしょうか。その時々でより良い判断を積み重ねていけたらよいなと思います。今回のInto the wombもそうですが、この2年間、ご縁を頂いて今まで想像すらしていなかったことがたくさんできていますので。

藤井綺香

私は、ドラえもんと一緒に暮らしたいです。

門脇明日香

(一同笑)

サラッと大きい夢語りましたね!ドラえもんと暮らす未来が実現するとたくさんの人の夢が叶いますね。

今後も『Into the Womb』の発展や次回作を楽しみにしております。

本日は、どうもありがとうございました!

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